カネミ油症被害者支援センターの
JESCO東京PCB処理事業所の施設見学にご一緒させていただいた~
施設見学について
パンフレット PDFファイル(2,038KB)
東京PCB処理事業所に行くのは久しぶり、、、
参加者のほとんどの方がPCB処理施設の見学ははじめてのようで、、
みなさん、熱心に説明を聞かれ、また、見学しながらの質問等もいろいろと、、、
本日は、見学コースからのPCB廃棄物搬入の様子はみられなかったが、大型トランスが粗解体中だった~
GPSモニタリングは、見学者用のパソコンが故障中とかでみられなかった、
東京事業紹介のDVD映像、JESCO担当者の説明もわかりやすく工夫はされていたが、、、
施設が立ち上がる前から関心を持って注視しているものとしては、気になる部分も多々あった~
特に気になったことを取り上げると、
東京事業のこれまでの最大の事故として、
試運転時の「PCB含む廃水の流出事故」と「PCB含む排気の排出事故」があるのだが、(都合約7ヶ月の操業停止)、、
なぜだか、かつて、環境省の「PCB廃棄物適正処理推進に関する検討委員会」席上でも大きな事故は、排水の流出事故のみとなっていたことがある。JESCOの職員も知らされていないのか、見学時も「これまでPCBの排出事故はありません」と言い切っていたな~ 確かに、操業中の事故ではないのだ。こともあろうか、PCB未処理排水の流出事故で操業停止となっている最中に起きた事故である。通常の操業をしているときは、東京事業所は、PCBオンラインモニタリングがあるので、PCB濃度「高高」になるとインターロックがかかるようになっていて、PCBの外部への排出は防げることになっている。しかし、事故が起きるときというのは、往々にして、予期せぬ時に起こるのだ、、、
事故やトラブルのとらえ方もいろいろある、、、
PCBの外部への流出や排気はその後ないことになっているが、故障や機器のトラブル、労働災害、内部での漏えいなどは度々起きている。PCBではないにしても、環境協定の協定値超過や基準値超過もあった。初期の頃は、なにしろ、配管の閉塞、閉塞、閉塞、閉塞、閉塞、でトラブル続き、PCB濃度「高高」も度々、ほんとうにどうなることかと思っていたが、、最近では配管などの腐食、腐食、腐食、減肉、減肉、減肉、で、ピンホールや応力腐食割れなどによるトラブル度々、いろんな機器からいろいろ各種の漏えい、蒸気漏れ、、配管からの水蒸気噴出事故もあった、、、 一昨日、「東京ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理事業環境安全委員会」が開催された。いつもこの委員会で「運転時のトラブル状況」の報告があるのだが、第39回にしてはじめて「順調な運転を継続して行っており、今回は、報告すべきトラブルはない。」ということであった。ほんとうに大変な事業であることは違いないのだが、ここまでよくやってきたと感慨深いのではあるが、、、
また、東京事業の「水熱酸化分解方式」を称えるにも節度を、、
(ご自分お仕事に誇りをもってのぞめるのはいいことだが、プラントメーカーのスポークスマンではないのだから、、、)
東京事業だけが「水熱酸化分解方式」で、JESCO他事業所はすべて脱塩素化分解方式である。もちろん、処理方式の長所や短所はそれぞれにあるのだろうが、、、水熱酸化分解は、PCB分解後は水として下水道に放流、脱塩素化分解のように処理残渣を産業廃棄物として出さないところが優れものと説明していた~
しかし、というか、実はである、、、
東京事業の場合のからくりは、試運転時に、PCB卒業判定後に下水道に放流すべく水は、六価クロムが下水排除基準(0.5mg/L)を超過していたのである。予期せぬハプニングというか、想定外のリスクを背負い込んだというか、従って、当初は、下水道への排水を取りやめ、産業廃棄物として処理を委託(5,000万円/月)していた。急遽、対策として、廃水処理施設(排水量:150m3/日)を施設内に設置して今日に至っている。最終的には、凝縮沈殿分はいまでも産廃業者に委託処分しているのでは?
東京事業の最大のリスクは、水熱酸化分解反応器にある(と、私は思っている)~
なにしろ、高温(370°C)・高圧(26.5MPa)で超臨界状態に近い水によってPCBを塩、水、二酸化炭素に分解するというのだから、高温・高圧に耐えうる反応器は、インコネル合金(NCF690:Ni 61.5、Cr 29.0、Fe9.0)という材質でできている。配管も部分的にインコネル690やインコネル625、、これらの合金から、クロムが溶出し続けているのである、、、ここのところ、配管は、腐食や減肉で、あるいは、早め早めに取り替えているが、反応器自体は取り替えはできない。当初は、10年間の暫定事業と言うことで、「溶出量を最大で試算しても10年間の操業中は大丈夫」ということであったが、もうとっくに10年は経過し、、、反応器の底部は腐食で肉盛り補修ということもしている。2007年3月には、「水熱分解反応器の急激な腐食・溶出で六価クロム濃度上昇)」という報告もあった~ 「卒業判定前の、気液分離槽下部でサンプリングした処理液の六価クロム濃度 12mg/ℓとなり、排水処理設備の入口管理濃度2mg/ℓを超えた。(通常の六価クロム濃度は1.4mg/ℓ 程度)」ということであった~もちろん、その都度いろんな対策を講じてはいるが、、、 こんな調子で、クロムの溶出が続き、PCB処理中に、万が一、反応器が減肉で亀裂や最悪破壊でもしたら大変なことになる、、、想像しただけでも恐ろしい、、、
また、東京事業の水熱酸化分解方式は、安定器なども処理ができるというのが売りだったはずだが、、、結局は、「東京事業所の稼動以来7年間にわたり、工程変更・設備改善など試行錯誤を繰り返し、様々な努力をしてきたが~~~」と言うことで、水熱酸化分解での安定器の処理はおこなわないと「東京事業所における安定器処理の方針について (報告書)2012年3月」決定。東京エリア分は北海道事業所での処理ということになった。これからも、まだまだ、実際に受け入れしていろんな問題が出てくるというものはありえるだろうし、、無事に、安全な処理が終了するのをみているしかないが~
後は、JESCO処理施設の財政面の質問に、処理料金で採算とれてやっているというお話だったが、、、
確かに現在は、処理量も増えて処理料金の収入もかなりの額になっている、
JESCO「環境報告書2017」によると2016年は 売上高は約727億6千万円(PCB処理料金)で、当期純利益は約156億円となっている。しかし、2004年から2010年までは赤字続きで、その後はやっと黒字に、、、トータルでみるとどうなのか、、その処理料金収入もPCB処理基金からの助成もあるし、、、、<関連(本ブログ)~財政面からみるPCB廃棄物処理事業~>
つまらないことだが、、、
東京事業紹介のDVD、映像が若干新しくなったようではあるが、、、
PCB卒業判定試験らしき映像、相変わらずの「部材採取試験法」を流している、、、
東京事業の卒業判定は、「洗浄液試験法」のはずだが、、、
カネミ油症被害者支援センターは、
いわずとしれた名前通りのカネミ油症被害者の支援センターなのであるが、、
長年取り組まれている数々の支援には頭が下がるのみで、なにも協力もできていないものとしては心苦しい、、、
先日も西日本新聞で『「カネミ油症」50年、救済は道半ば 3者協議、形骸化の懸念も 患者団体はいら立ち』というニュースが流れていたが、PCB廃棄物を廃絶させるという国の使命もさることながら、カネミ油症被害者の救済もまだまだ道半ばということで、、今回も、ご一緒させていただいたものの、なにも力およばずで、、、
ということで、カネミのことをあれこれ考えていて、
中防から帰りのバスのなかでも、PCB廃棄物処理の処理は使用者・保管者の責務となっているなか、行政代執行分は結局は税金で処理となるのか、せめて製造者責任で無害化処理をすべきではとか話していて、、、帰宅して、気になったので、環境省の「高濃度 PCB 廃棄物の行政代執行に対する支援のあり方検討会報告書」を見直していたら、
PCB を製造した者については、社名変更・合併等はあるものの後継事業者が存在
し、PCB が使用されている製品については、高濃度の PCB を含む絶縁油を使用した
高圧変圧器・コンデンサー等及び安定器等が PCB 廃棄物の大部分を占め、その当時
の製造者又はその後継事業者が相当程度存続していることから、これらの関係事業
者に対して、PCB 特別措置法第4条及び第 22 条の規定を踏まえた社会的責任に鑑
み、社会貢献として、基金への出えんについて協力を求めることが適当である。
「高濃度ポリ塩化ビフェニル廃棄物に係る行政代執行に対する支援について(依頼)」というものもあった。
ということで、平成28年度のポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基金には、民間出えん金(代執行支援事業)分として45,000,000円計上してあった。
カネミ油症被害者や支援センターからみれば、、PCB製造事業者は直接の被害者にこそ救済措置を求めたいところだろうが、
カネミ(現カネカ)絡みで考えると、
2018年2月に、兵庫県は、「株式会社カネカ高砂工業所の産業廃棄物処理施設設置許可申請書及び生活環境影響調査書」の縦覧を開始したのだが、、
それは、カネカの高砂工業所に保管しているPCB廃棄物は、JESCOの受入基準で水分含有量が超過しているので、受入条件を満たすための「洗浄・分離処理を実施する施設」を設置するというもの。--水分含有量が多い高濃度PCB汚染物(汚泥状物など)中のPCBと水分をイソプロピルアルコールで抽出・分離し、高濃度PCB液と低濃度PCB廃棄物に分離する。分離後のPCB廃棄物はJESCO及び認定処理施設で処分する。-- (参考本ブログ「(株)カネカ 高砂工業所(PCB廃棄物洗浄・分離処理施設)産業廃棄物処理施設設置許可申請書及び生活環境影響調査書」)
東京事業とおおちがい、、(それがいいのか悪いのかはわからないが)
東京事業の場合は、やっかいな「リン含有PCB油」の処理について、これまで何年もかけて処理計画、前処理実証設備、実証試験を行って、これから実機施設を整備して処理を行うというもの。いつもなにか納得いかないのだが、、、最初に報告されたのは、2015年3月の環境安全委員会で「リン化合物含有PCBの前処理の検討について」、、
その、東京事業特有の「リン含有PCB油」は、水熱酸化分解方式ではうまく処理できないというのだから、他事業所との連携という考えは検討されたのかどうか???、、、また、カネカのように、JESCOの受け入れ基準に満たすべく保管事業者の前処理という検討はなかったのかとか、、もっとも、保管事業者と東京事業所との連携で処理計画は進められているという話しではあったが、、、現時点では、「リン含有PCB油」の処理も、最終的な処分期限、処理期限には間に合う計画とはなっていたが~
ついつい長くなってしまったが、、、
ダラダラとわけのわからないことを書き連ねてしまった~
久しぶりに、PCB東京事業の過去のことをあれこれ思い出したり、、、
花粉症とはいえ、すこしは頭が活性化したかな、やはり老化現象の方が強いかな、
連日の夏日で、、、今日もほんとうに暑かった、、、
中防では、、春の気配も夏の気配も全く感じられずに、、、
ここのところ暑い中、連日外に出ているので、花粉をたっぷり吸い込んでしまった、、、
昨日も、病院付添の帰りに、両国界隈を花見がてら歩いて、花粉に曝された~
関連(本ブログ)
・中間貯蔵・環境安全事業株式会(JESCO)「環境報告書2017」から~2017年09月25日
財政面からみるPCB廃棄物処理事業
●JESCO営業成績及び財産の状況(環境報告書から)
大きな金額に縁がないので、,,単位を百万円にされると、一瞬考えてしまうのだが、、、
2016(平成28)年でみると
売上高は約727億6千万円、←PCB処理料金
当期純利益は約156億円、
総資産は約895億円ということになるのか~
財政面にうというので、これをどう見ればいいのかはわからないが、、JESCOの場合、当期でどんなに利益が出ていようが、元々の事業そのものを税金でおこなっているので、、処理が順調に進み、当期純利益が赤字でなくなっただけでもよしとするのか、、、
環境報告書では、売上高、当期純損失、総資産総資産のみがでている。
JESCOホームページの決算情報「事業計画」の建設費・処理事業費をみると~
■決算情報「事業計画」
事業計画の「建設費」と、環境報告書の「設備投資」の金額の違いはよくわからないが~、
●JESCO設備投資額の推移(環境報告書より)
●JESCO5事業所の主なプラント建設費用(JESCO入札契約情報より)
それはそうと、、、
PCB特別措置法で処理期限が大幅延長となって、、、
PCB廃棄物処理基金の拠出割り当てがどうなるのか気になる~、、
当初は、平成12年度、中小企業者が保管しているPCB廃棄物に係る処理コストを概ね1.160億円と見積もった上で、中小企業者の自己負担額を600億円、残り560億円を国及び地方公共団体で平成26年度末までに案分して見込額を出していたが、、、
■PCB廃棄物処理基金のしくみ(環境再生保全機構HPより)
PCB廃棄物処理基金は、国、都道府県からの補助金と産業界等民間からの出えん金で造成されています。この基金は、環境 大臣が指定した処理事業者に対し、中小企業者等が保管するPCB廃棄物の処理費用の軽減及びPCB廃棄物処理の研究・研修等の促進を目的として助成を行い ます。
●ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基金の状況(平成29年3月31日現在)(PDF、80KB)
環境再生保全機構HPに拠出金の内訳↑↑など詳しくでていたのでグラフにした~
ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基金の状況(平成29年3月31日現在)
①補助金(国): 26,600,000,000円
②補助金(都道府県):26,027,195,000円
③民間出えん金: 480,800,000円+45,000,000円
④運用収入: 1,789,129,978円
⑤助成事業: △16,863,423,956円
⑥消費税・戻り分: 27,933,194円
PCB基金残金: 38,106,634,216円 ←残金381億円もあるのだ!!
①+②+③+④+⑤+⑥)
詳細は~
●PCB廃棄物処理基金の拠出状況
残金が多くなって、、、民主政権の頃、事業仕分けでも話題に出ていたような
さすが、近年は拠出額は少なくなって、、、しかし、安定器や汚染物の処理が進めば助成額も増えるのだろうか?
追記(2018年3月31日)
平成28年の民間出えん金(代執行支援事業)は、、おそらくPCB製造事業者からかな?(未確認)
環境省の「高濃度 PCB 廃棄物の行政代執行に対する支援のあり方検討会報告書」及び、、、
「高濃度ポリ塩化ビフェニル廃棄物に係る行政代執行に対する支援について(依頼)」として
ポリ塩化ビフェニル製造者及びポリ塩化ビフェニルが使用されている製品の製造者に対し、これらの関係事業者にはポリ塩化ビフェニル廃棄物の処分に関する法的責任はないことに留意しつつ、難分解性である等の性質を持ち、高額な処理費用を要するポリ塩化ビフェニル及びポリ塩化ビフェニル含有製品を製造した者としての社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)に鑑み、社会貢献として応分の協力を広く求めることが適当であるとされました。
ついては、高濃度ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理期限内の確実な処理に係る自治体支援の必要性について御理解いただいた上で、貴社/貴団体におかれては、別添を踏まえ、新たに造成する基金への出えんについてご協力を賜りますよう、お願いいたします。
民間出えん金の4億8千万円は(財)電気絶縁物処理協会(現在は解散して存在しない)、
80万円は㈱サンリブ (福岡県に存在するスーパーマーケット)
●PCB廃棄物処理基金の助成状況
PCB廃棄物の保管事業者が負担する無害化処理(中小企業者等の助成はあれど)
--PCB製造者責任は不問で--
多額の税金を使っての処理、そのPCB廃棄物の処理進捗状況は~