■ 家庭ごみ最終処分場、長引く維持管理 基準クリアできず 静岡
@S[アットエス] by 静岡新聞-2016年11月19日
人体に影響があるレベルではないが、不燃物の埋め立て層に混じった有機物から発生するメタンなどに悩む一般廃棄物最終処分場=16日午前、県西部
家庭ごみなどが行き着く静岡県内の一般廃棄物最終処分場で、埋め立て終了後の維持管理期間の長期化が問題になっている。ガスの発生や排水などで環境基準をクリアできないことが原因で、年間数千万円の維持管理費が30年近くかかり続けている施設もある。役割を終えてもコストが生じる“負の遺産”。解決の特効薬はなく、関係者は頭を悩ませている。
県内全施設を対象に、県環境衛生科学研究所が2014年12月時点で実施したアンケート調査で、埋め立て終了後の維持管理期間が10年以上経過している施設は8カ所あった。さらに年間の維持管理費は、500万円以上1千万円以下の施設が2カ所、1千万円以上は3カ所だった。
処分場のうち、廃プラスチックやがれきなど不燃物を埋めた施設では、有機物の分解過程で発生するメタンと二酸化炭素が問題になっている。2004年に埋め立てを終えた県西部の処分場はボーリング調査で、不燃物の層に混じった多量の布や木片などが確認された。施設を管理する広域組合の担当者は「現在の基準で言うと、当時はごみの分別が不十分だった」と指摘し、「有機物が腐りきるのを待つしかない」とため息をつく。
燃えるごみの焼却灰を埋めた施設は、地下水質の管理が課題。焼却時の排ガス処理で使用した石灰の影響で、地下水がアルカリ性になって排水基準のpH値を超過してしまう事例が目立つ。
県中部の広域組合は1988年と2001年に埋め立て終了した処分場で、pH値を中和する水処理を続けている。年間の維持管理費は2カ所合わせると3千万円程度。担当者は「pH値は今も高い。今のところ処分場を廃止する見込みは立っていない」と打ち明ける。
問題解決には、処分場地下の通気性・通水性を高める対策などが考えられるが、全国的にも確立した方法はない。県環境衛生科学研究所の大山康一主任は「市町ごと手探りの対応では限界があり、情報共有が必要」と現状を見つめ、「要望があれば、管理者と一緒に現状から何ができるか研究を継続して進めたい」と意欲を示す。
<メモ>県内のごみ排出量推移と循環型社会への取り組み 県のまとめによると、県内の年間ごみ総排出量が最も多かったのは2003年で約156万トン(1人1日排出量1126グラム)だった。14年は約125万トン(同902グラム)でピーク時の約8割まで減った。循環型社会を目指す端緒になったのは、2000年完全施行の容器包装リサイクル法。家庭ごみの約6割を占めていた容器と包装について、事業者にリサイクルを義務付け、市町村と消費者に分別の順守を求めたことで、ごみの総量が減り、最終処分場に埋め立てる不燃物と焼却灰の量も減少している。