古紙再生促進センター「オフィス発生古紙のリサイクル ~紙をごみにしないために~」より
非常に優れものの小冊子~
古紙再生促進センターは、各種統計資料の公表や、古紙リサイクル促進のための調査報告書、普及啓発用のパンフレットなどを作成してネット上で公開している。最新版の「オフィス発生古紙のリサイクル ~紙をごみにしないために~」は、今、23区に求められている、事業系ごみの減量や資源リサイクル推進、その中でも最も確実に資源化可能なオフィス古紙のリサイクルに役立つ情報満載の小冊子といえる。とてもタイムリーなうれしいまとめである。
「オフィス発生古紙の現状と流通」では、古紙の流通の過程をていねいに説明、また、古紙がどのようなものに再生されるかなども、そして、「オフィス発生古紙の現状」では、事業所の古紙のリサイクル取組は進んでいるものの「オフィス雑がみ」の回収率が低いことがグラフなどでわかりやすく示されている。また、古紙回収の「分別のルール」や「回収システム」も多くの事例がでている。
冊子の中では、『排出量 全 国の事業所で1年間に発生する古紙は約960万トンで、約830万トン(86.4%)が回収されリサイクルされています。残りの約130万トンは可燃ごみ として処分されています。とくにOA用紙、シュレッダー紙、オフィス雑がみの回収率が低く、130万トンの約73%を占めており、オフィス発生古紙のリサ イクルを進める上での課題となっています。』となっているのだが、
23区の事業所から排出されるごみは、古紙の回収率はとても86.4%には満たないと思う。各区とも事業用大規模建築物から排出される一般廃棄物について、事業者から「再利用計画書」を提出されて集計しているのだが、、、清掃一組の一般廃棄物処理基本計画改定時の、事業系ごみ減量予測の参考資料を見ると、可燃物全体の資源化率は大規模事業所で58%、中小事業所で資源化率 24%である。(いずれも平成24年度結果)
そして、「再利用計画書」による、発生量と再利用量の内訳では、再利用量のほとんどが紙類の資源化となっている。事業系ごみの排出量の多い8区分の集計結果は、紙類全体の平均資源化率は74.3%となる。コピー用紙・OA用紙、機密文書、雑誌・パンフレット、新聞紙・折り込みチラシ、段ボールなどはいずれも90%以上の回収率ではあるが、ミックスペーパーなどを含むそのほかの紙類のリサイクル率は46.8%である。
また、古紙の発生量からみると、リサイクル率のいちばん低いその他の紙類が量的には一番多い。リサイクルされずに廃棄された紙類は7区分だけでも10万7千トンとなった。(参考:千代田、中央、港、新宿、江東、大田、世田谷、足立の再利用計画書の集計結果) おそらく23区全体の「再利用計画書」の紙類の平均リサイクル率も同様に推測できる。そして、あまりリサイクルの進んでいない、中小事業所についてはさらに紙類の廃棄量は多いと予測できる。
23区の事業所や、事業系ごみの減量や適正処理の指導を行う23区の担当部署は、この「オフィス発生古紙のリサイクル ~紙をごみにしないために~」を活用して、さらなる事業系ごみの削減に努力してほしい。さまざまな取組事例もでているが、23区、それぞれの地域にあったリサイクルシステムの充実を願っている。
平成 26 年経済センサス‐基礎調査で、事業所数は63万8241事業所、従業者数 は 961万2367人という大都市東京、そこから排出される事業系ごみもおそらく全国一であろう。他都市でできて、東京でできないはずはない。紙をごみにしないために、オフィス発生古紙のリサイクルシステムの充実を願う!!
以下、「オフィス発生古紙のリサイクル」から抜粋
「オフィス発生古紙のリサイクル ~紙をごみにしないために~」
目次
はじめに
オフィス発生古紙の現状と流通
オフィス発生古紙の流れ ....................................................................................................... 1
オフィス発生古紙の流通 ....................................................................................................... 3
オフィス発生古紙の現状 ....................................................................................................... 5
古紙回収の推進
オフィス発生古紙と事業所 .................................................................................................... 7
オフィス発生古紙の排出 ....................................................................................................... 9
オフィス雑がみ .................................................................................................................... 10
古紙に混ぜてはいけないもの(禁忌品) ............................................................................ 11
資料
少量排出事業所と回収システム .......................................................................................... 13
事業所の古紙回収~事例~ .................................................................................................. 14
オフィスビルの古紙回収システム ....................................................................................... 18
地域の古紙回収システム ..................................................................................................... 21
機密抹消とリサイクル ......................................................................................................... 24
オフィス発生古紙の現状
■排出量 (一部抜粋)
全国の事業所で1年間に発生する古紙は約960万トンで、約830万トン(86.4%)が回収されリサイクルされています。残りの約130万トンは可燃ごみとして処分されています。とくにOA用紙、シュレッダー紙、オフィス雑がみの回収率が低く、130万トンの約73%を占めており、オフィス発生古紙のリサイクルを進める上での課題となっています。
オフィス雑がみ
■オフィス雑がみとは
オフィス雑がみは、新聞・雑誌・段ボール・紙製飲料用パック以外の紙のことです。また、雑誌は、マガジン
類のほか綴じられた冊子なども含みます。
オフィス発生古紙の回収量増加と品質の改善をめぐる課題は、オフィス雑がみの回収と禁忌品の混入防止に集
約されます。事業所の規模を問わず、新聞・雑誌・段ボールの3品目については、高い回収率を達成しています
が、シュレッダー紙を含む種々雑多な紙が混在するオフィス雑がみの焼却量は、かなりの量に上っています。
オフィス雑がみの回収にあたっては、3品目と異なり、禁忌品の見分けがつきにくいものが多いことが、排出
者の分別の阻害要因の一つになっています。
古紙に混ぜてはいけないもの(禁忌品)
オフィス雑がみをごみにしないためには、製紙原料にならない禁忌品(異物)を分別除去することが大切です。
禁忌品とは、リサイクルできないもので製紙原料とは無縁のものや不良品の原因になるもののことです。
■禁忌品の例
事業所の古紙回収~事例~
事業所の業種・業態によって発生する古紙の特徴(発生特性)がみられます。小規模事業所の分別区分をみると、古紙の種類は異なりますが、2分別~4分別が多くなっています。回収ルートは、許可業者が多いものの、事業所の立地環境によって特徴的なケースもみられます。
-取組の図は省略-
A【オフィス】
A社は、ガス・水道工事の請負業者です。従業員数は約10人ですが、単独のビルに入居しています。古紙の発生量は100~200kg/月で、段ボールが多く発生します。
B【オフィス】
B社は、冷暖房用の冷水、温水、蒸気等の製造販売業です。店舗、レストランなどが混在する複合施設に入居しています。従業員数約10人の小規模事業所です。古紙の発生量は50kg未満/月で、雑誌、オフィス雑がみ、シュレッダー紙が発生します。
C【オフィス】
C社は、工業団地内に事務所があるマーケティング会社です。従業員数は、約50人です。古紙の発生量は200kg以上/月で、新聞、シュレッダー紙、機密文書が発生します。
D【オフィス】
D社は、有線テレビ放送会社で、単独のビルに入居しています。従業員数は、約50人です。公共性が高い事業を行っているという認識で、リサイクルに取り組んでいます。古紙の発生量は200kg以上/月で、OA用紙の発生量が多く、個人情報が記載された機密文書は社内でシュレッダー処理しています。
E【オフィス】
E社は、土壌修復の専門業者です。オフィスビルに入居しており、従業員数約70人の事業所です。古紙の発生量は50kg~100kg/月で、シュレッダー紙が多く発生します。課題は、社員の環境意識で、機会があればオフィス雑がみの分別精度を高めて、資源化ルートに乗せることです。
F【工場】
F社の建物は、単独のビルの事業所で、建築用の鉄骨を生産する製造業です。従業員数は約40人です。古紙の発生量は500kg以上/月で、OA用紙や図面が多く発生します。機密文書の処理が課題で、現在は社内でシュレッダー処理しています。
G【工場】
G社は従業員数約40人の自動車用シートを生産する製造業です。建物の形態は単独ビルです。ISO14001の認証を取得しており、社員の分別リサイクル意識も定着しています。古紙の発生量は2,000kg以上/月で、梱包用の段ボールと紙管やクラフト紙などその他の紙が多く発生します。
H【工場】
H社は、大手事務機器メーカーの下請企業で、モールドプラスチックの金型設計と制作が業務内容です。単独のビルに入居しており、従業員数は約50人です。ISO14001の認証を取得しており、社員のリサイクル意識が高い事業所です。古紙の発生量は200kg以上/月で、段ボールとシュレッダー紙が多く発生します。
I【工場】
I社は、自動車用照明器具を生産する製造業で、従業員数は約40人です。取引先から環境対応を要求されており、社内でリサイクルを推進しています。古紙の発生量は50kg~100kg/月で、OA用紙が多く発生します。工場ですが、樹脂系の通い箱を使用しているので段ボールの発生量が少ないのが特徴です。
J【工場】
J社は、精密機械製造業で、従業員数は約50人です。古紙の発生量は100kg~200kg/月で、シュレッダー紙と段ボールが多く発生します。課題は、古紙類のみを引き取ってくれる古紙専門業者がいないことです。
K【カフェ・ダイニング】
K社は、従業員数が8人で、ローテーションで4~5人が勤務するカフェ・ダイニングです。古紙の発生量は50kg未満/月で、段ボールがほとんどです。段ボール以外のその他の紙のリサイクルが課題です。
L【倉庫】
L社は、従業員数が35人の中規模の倉庫会社で、保管対象は物品と保存文書の2種類です。保存年限終了文書以外の古紙の発生量は100kg~200kg/月です。課題としては、溶解する古紙に混入すると支障が生ずる恐れがある禁忌品の情報の入手方法があげられます。
M【学校】
M小学校の教職員数は約30人、生徒数は約400人です。古紙の発生量は200kg以上/月です。保管場所が確保できることもあり、発生古紙の種類が分別区分となっています。古紙の分別方法や禁忌品の情報の入手が課題としてあげられています。
オフィスビルの古紙回収システム
延べ床面積が3,000m2以上のオフィスビルは、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(ビル管理法)の規制対象となっています。東京23区をはじめ都市部では、1,000m2以上のビルを廃棄物減量化施策の対象とする自治体が増加しつつあります。ビルの規模に関わらず、ビル管理会社が管理を請け負っているビルのほとんどが古紙の分別排出を行っています。こうしたオフィスビルでは、テナントの意向や意識に関わらず、古紙の分別排出は定着しています。
-取組の図は省略-
【保管庫があるビル】
O【ビル】
■所在地 東京都
■延べ床面積 2,500~3,000m2未満
■概要 7階建てのビルで、ビルの管理は鉄道会社のグループ会社であるビルメンテナンス会社が管理しています。
■回収品目 OA用紙、新聞、雑誌(チラシ含む)、段ボール、ミックス古紙、機密文書
P【ビル】
■所在地 東京都
■延べ床面積 1,500~2,000㎡未満
■概要 9階建てのオフィスビルで、テナント数は7事業所です。1階は倉庫として使用されています。テナントは、すべて小規模事業所で、各テナントの従業員数は10人~20人程度です。
■回収品目 新聞、雑誌、段ボール、OA用紙、シュレッダー紙
Q【ビル】
■所在地 神奈川県
■延べ床面積 1,500~2,000m2未満
■概要 8階建てのオフィスビルです。ビルの共用部の面積が小さく、1階玄関と各フロアのエレベーターを降りて 5~6m2程度の共用部がある程度です。
■回収品目 新聞、雑誌、段ボール、シュレッダー紙、その他の紙(OA用紙含む)
R【ビル】
■所在地 東京都
■延べ床面積 1,500~2,000m2未満
■概要 8階建てのビルメンテナンス会社の持ちビルで、テナントの半分は同社と関連会社が占めています。
■回収品目 OA用紙、新聞、雑誌、段ボール、シュレッダー紙、オフィス雑がみ、機密文書
S【ビル】
■所在地 大阪府
■延べ床面積 3,000m2以上
■概要 14階建のオフィスビルで、オーナー会社が3フロアを占有しており、残りにテナント8社が入居しています。オーナー会社は、ISO14001の認証を取得しており、資源の分別に熱心な会社です。
■回収品目 新聞(雑誌含む)、段ボール、シュレッダー紙
【保管庫がないビル】
T【ビル】
■所在地 東京都
■延べ床面積 3,000m2以上
■概要 9階建てのオフィスビルで8階と9階にオーナーである不動産会社が入居しています。地下1階は貸会議室、清掃控室は地下2階に置かれています。
■回収品目 新聞、雑誌、段ボール、シュレッダー紙、ミックス古紙、機密文書
U【ビル】
■所在地 東京都
■延べ床面積 1,000~1,500m2未満
■概要 出版社がオーナーの4階建てのオフィスビルで、4階に系列会社のテナントが入居しています。
■回収品目 コピー用紙、新聞、雑誌、段ボール、ミックス古紙(シュレッダー紙含む)、返本・残本雑誌、機密文書
V【ビル】
■所在地 大阪府
■延べ床面積 2,500~3,000m2未満
■概要 9階建のオフィスビルで、入居しているテナントの業態は、すべてオフィスです。共用面積が狭くほとんどがテナントの専用オフィスになっています。
■回収品目 新聞(雑誌含む)、段ボール、OA用紙
W【ビル】
■所在地 大阪府
■延べ床面積 1,000~1,500m2未満
■概要 老朽化した典型的な雑居ビルです。テナントの業態は、オフィスというよりは、店舗がほとんどで、飲食店(居酒屋)、日焼サロン、レコードショップ、ネイルサロン、占い館などです。
■回収品目 古紙は可燃ごみと一緒に収集
地域の古紙回収システム
1991年にオフィス町内会が設立されたのを契機に地域レベルの古紙回収システムが導入されてきました。単独では採算の取れない集積場の小規模事業所も含めて回収することで、回収車の巡回効率を高めることができます。こうしたオフィス町内会と同様の運営方式で、千代田区、港区、中央区で「エコ・オフィス町内会」が導入されています。
青森オフィス町内会~全県レベルの回収システムの整備~
■発足年 2010年
■特徴 行政(青森県)の積極的なイニシアチィブが町内会の組織化を牽引し軌道にのせています。町内会事務局が実際に古紙を回収する協同組合内に設置されており、コスト削減につながっています。
■回収品目 新聞、段ボール、ミックス古紙(雑誌・雑紙類又は雑紙類)、機密文書
■料金 機密文書以外は無料
R団連すみだ(エコチャ)~少量排出事業所からの古紙回収システム~
■発足年 1995年
■特徴 事業所は、資源回収業者や古紙業者に排出する方法、事業系ごみとして排出する方法、エコチャの回収システムに排出する方法の3つから選択します。
■回収品目 コピー用紙・コンピュータ用紙、新聞紙、雑誌・書籍・パンフレット・封筒、段ボール、シュレッダー紙
■料金 10円/kg ~
ちよだエコ・オフィス町内会~小規模事業所からの古紙回収~
■発足年 1995年
■特徴 小規模事業所を対象にした回収システムを千代田区が推奨しています。
■回収品目 上質コンピュータ用紙、上質コピー用紙、再生コンピュータ用紙・再生コピー用紙、新聞紙・折込ちらし、雑誌・その他の紙、シュレッダー紙、機密文書
■料金 5 ~ 20円/kg 回収負担金=(回収料金-古紙売却代金×古紙重量)
府中市~オフィス発生古紙の行政回収~
■発足年 2010年
■特徴 ごみの減量化を進めるため、少量排出事業所からごみと資源を無料で行政回収しています。
■回収品目 新聞、段ボール、雑誌・雑がみ、シュレッダー紙
■料金 無料(排出量制限10kg/回未満、事業所登録要)
甲府商工会議所~会員事業所からのオフィス発生古紙回収システム~
■発足年 1996年
■特徴 行政は全く関与しておらず、単独の取組として実施しています。古紙の回収方法は混合回収です。
■回収品目 すべての古紙
■料金 21.5円/kg
福岡市~許可業者を活用したオフィス発生古紙回収システム~
■発足年 2002年(モデル事業)、2006年(市全域)
■特徴 事業所から事業系一般廃棄物の収集を行う許可業者の収集事業を活用した古紙回収で市内全域を対象にしたシステムです。
■回収品目 すべての古紙
■料金 ごみ処理料金の範囲内
北九州市~小規模オフィス町内会の設置による古紙回収システム~
■発足年 2005年
■特徴 一つの回収システムが市内全域を対象とするのではなく、商店街や企業内組合など事業所の集積地域に、20~30事業所が参加する小規模の回収システムを多数導入する事業所版の集団回収です。
■回収品目 段ボール、ミックス古紙
■料金 段ボール(無料)、ミックス古紙(125円/45リットル袋)