岩手県の産業廃棄物の焼却施設、いわて県北クリーン「いわて第2クリーンセンター」が、平成21年8月から平成28年4月までの間、排ガスの連続分析計の測定値の一部を改ざんしていたという「排ガス濃度のデータ改ざん 岩手県のごみ焼却施設」ニュースである。いわて第2クリーンセンターの運転(営業)開始は平成21年4月1日となっているので、運転開始早々からすでに改ざんが始まっていたということになる。
排ガスの法規制値の超過はなかったものの、九戸村との公害防止協定値(法令の排出基準値よりも厳しい値)を超過していなように不正操作していたということで、報道では、「塩化水素など3項目で計測値が管理値を超えた際、職員が手動で数値を入力し、超えていないよう見せかけていた。」ということ。
■ 排ガス濃度のデータ改ざん 岩手県のごみ焼却施設
日本経済新聞 2016年7月15日
岩手県九戸村で産業廃棄物処理施設を運営するいわて県北クリーン株式会社は15日までに、同村のごみ焼却施設で2009年8月~16年4月、焼却時に出る排ガス濃度のデータを改ざんしていたと発表した。大気汚染防止法上の基準超過はなく、環境への影響はないとしている。
同社は、ダイオキシン類の発生を法令上の10分の1に抑えるなど、厳しい管理値を独自に設定、九戸村と公害防止協定を結んでいる。同社の調査によると、塩化水素など3項目で計測値が管理値を超えた際、職員が手動で数値を入力し、超えていないよう見せかけていた。
施設の維持管理を担当する従業員の間で、約7年前から引き継がれていたという。調査に対して従業員は「協定を守らないといけないとの意識が強くなりすぎてしまった」と話している。
今年4月に従業員から申告があり発覚した。同社は6月に岩手県と九戸村に報告しており、14日から1週間、操業を停止して再発防止の従業員研修を開く。〔共同〕
■産廃処理施設が排ガスデータ7年間改ざん
河北新報 2016年7月16日
岩手県九戸村江刺家の産業廃棄物処理業「いわて県北クリーン」(松本栄市社長)が運営する焼却施設で、焼却炉から出る排ガスの化学物質濃度のデータが約7 年間にわたり改ざんされていたことが15日、分かった。大気汚染防止法で定める基準値は超えておらず、同社は「環境への影響はない」としている。
同社によると、改ざんがあったのは2009年8月~今年4月。従業員の内部告発で発覚した。村と結ぶ公害防止協定で定めた基準値を超えそうになったり、超 えたりすると制御室の機器を手動で操作し、数値を実際より低く入力した。改ざんは計約1000回に及び、焼却炉の運転に関わる従業員13人全員が関わって いたという。
同社は07年、大気汚染防止法より厳しい基準の協定を村と締結。排ガスに含まれる化学物質濃度の基準は、1時間当たりの平均値で塩 化水素が80ppm(国の基準値430ppm)、窒素酸化物100ppm(同250ppm)、硫黄酸化物50ppm(同3761ppm)だった。
県は同社に改善を指示。法令違反ではないため行政処分の対象にならない。同社の村田英敏事業所長は「村や県、地元住民を裏切る行為で申し訳ない。再発防止を徹底し信頼回復に努める」と話した。同社は社員の法令順守教育のため14~20日、焼却炉の運転を休止している。
それにしても、約7年間も何のチェックも入らなかったのだろうか、立入検査とかではそこまでわからない?、、、地元も、公害防止協定を結んで、事業者を信 頼してお任せだったのだろうか。もちろんデータを改ざんされて知らんぷりされていたらわかりようがないのかもしれないが、、、いくら法規制値の超過はなく とも、協定値を守るべく運転をするというのは、地域住民との操業の条件というか、約束というものだろうに、、極端に法規制値よりも厳しい協定値を設定して も、、、改ざんではね、、岩手県からは、「優良産業廃棄物処理業者認定」の中間処理★★の認定を受けている。
2007年頃、ほとんどの製紙会社のばい煙発生施設で、排出基準値の超過やデータが改ざんされていたということが明るみに出て、、、その後、環境省は、ばい煙の排ガスや排水の測定結果の改ざん等に対する罰則(30万円以下の罰金)も設けた。「大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律の施行について」では、「ばい煙排出者に対し、ばい煙量等の測定結果の記録に加え、その記録の保存を義務付けるとともに、意図的にこれらの義務に違反して、記録をせず、虚偽の記録をし、又は記録を保存しなかった者に対する罰則を設けることとする。」ではあるが、法規制値であれ、協定値であれ、測定データを改ざんした場合は、やはり悪質なのだから、今回のケースも該当となると思えるが、どうなのか?(追記、河北新報「産廃処理施設が排ガスデータ7年間改ざん」によると「法令違反ではないため行政処分の対象にならない」と、、、)
以前、同じようなケースで、長与・時津環境施設組合や城南衛管組合の折居清掃工場でのデータ改ざんも、連続測定の運転日報の改ざんだった。測定値も後から手動で入力し直しができるのであれば、連続測定の日報も数字だけ見ていても信用できないということになる。
いわて県北クリーンは、「同様の操作が出来ないようデータ集計システムの改修は完了」となっていたので、、、単に、維持管理記録や運転日報も、,今後は、「手動で入力し直し可能かどうか」までもチェックしなければならないな~ 機械も所詮は、どのように記録するのかは人間が設定するのだろうから。
先 週、23区の中央清掃工場の維持管理記録日報を2014年2月から直近までを閲覧してきた。中央清掃工場、2度にわたる水銀による炉停止。第1回目は1億 9千万円、2回目は1200万円もの復旧費用を要した。その排ガス中の水銀濃度超過時を主にチェックしてきた~ また、平常時(?)の水銀排出量がどの程 度なのかなど、、、あと、液体キレート緊急自動注入装置の効果(?)なども、、、いろいろ勉強になった。
いわて県北クリーン株式会社「いわて第2クリーンセンター」のホームページによると、
施設は、「岩手県が推進するいわて資源循環型廃棄物処理構想」の理念においてPFI方式により公募され、優先交渉権者に選定されたグループ(株式会社タクマ・株式会社タクマテクノス・西松建設株式会社の3社)を母体として、岩手県の廃棄物施策の推進と実施を目的として設立されました。 ということである。
以下、いわて県北クリーン株式会社ホームページから抜粋
処理能力
施設名 処理能力 焼却施設 87.9t/日 溶融施設 13.13t/日 破砕施設1 (廃プラ類) 約30.6t/h 破砕施設2 (廃プラ類) 約21.7t/h
環境保全対策(生活環境に対する影響)
当施設は公害関係法令の規制を遵守し、
さらに排出ガス等について下記の環境保全基準を守ります。
(K値 0.25) K値 17.5 塩化水素 80ppm以下 430ppm以下 窒素酸化物 100ppm以下 250ppm以下 一酸化炭素
(1時間平均値)
(4時間平均値)
100ppm以下
30ppm以下
100ppm以下
30ppm以下 ダイオキシン類 0.1ng-TEQ/㎥N以下 1ng-TEQ/㎥N以下
維持管理に関する記録
◆平成28年度
平成28 年 7 月 14 日
関係者 各位
いわて県北クリーン株式会社
代表取締役社長 松本 榮市
いわて第2クリーンセンターにおける排ガス測定値の不正操作事象 のご報告 と それに伴う焼却施設の運転休止について
時下 益々ご清栄のこととお喜び申し上げます
さて、弊社の廃棄物焼却施設である「いわて第 2 クリーンセンター(岩手県九戸郡九戸村 大字江刺家第 20 地割 48 番地 34 )では、平成2 1 年から平成 28 年 4 月まで、排ガスの連続 分析計 の測定値の一部を、九戸村との公害防止協定値 (法令の排出基準値よりも厳しい値) を超過していないように不正に操作しておりました。
平成 28 年 4 月の事象発覚後、 不正操作された全ての測定値の検証を 焼却炉メーカ立会い指 導のもとで行った結果、法令で定める排ガスの排出基準値の超過や、焼却施設の不具合に 起因する排ガス数値を不正操作したような事象は確認されず、周辺環境への影響はありま せんでした。
しかしながら、協定値を超過した際に は 岩手県及び九戸村への報告を行うべ きところ を 、 これを免れるために不正操作を行っていたことは、極めて不適切な行為であります。
再発防止対策として、同様の操作が出来ないようデータ集計システムの改修は既に完了し ておりますが、さらなる不適正な事象の発生防止を図るため 、 下記のとおり、焼却施設の運 転を一時休止のうえ、従業員のコンプライアンス 意識の向上 や運転操作の技術向上に関する再 教育を集中的に実施することといたしました。
このような事態を生じ、地域住民の皆様をはじめ、関係機関並びに取引先各位へ多大なる ご迷惑とご心配をお掛けいたしますことについて、本書を借りてお詫び申し上げますとと もに、改善 及び 再発防止に向けた措置を徹底し、社員一丸となって信頼回復に努めて参る 所存ですので、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
記
運転休止(炉)の期間及び内容 運転休止(炉)の期間及び内容
期間:平成 28 年 7月 14 日(木)~平成 28 年 7月 20 日(水)
以上