WWF「プランテーション開発による影響:周辺国をも襲うインドネシアからの煙害」より転載
昨年10月、NHKの「インドネシアの森林火災 広がる影響」で報道されたようで、インドネシアの森林火災の深刻な状況は多くの人に知られているのだろう。また、新聞やネットニュースなどでもさまざまな情報が流れている。
NHK 2015年10月15日
インドネシアの森林火災が深刻だ。農園の拡張などを目的とした「野焼き」が大規模な森林火災に発展し、これまでに東京都の面積の約8倍にあたる170万ヘ クタールが消失した。被害を受けているのが、森の住人オランウータン。生息地を追われ、民家の近くで保護されるケースが相次いでいる。さらに、海を挟んで 隣国のシンガポールでは煙害による大気汚染が広がり、小中学校が臨時休校に追い込まれるなど、国境を越えて影響が広がっている。被害の現状をジャカルタ、 シンガポールの二元中継で伝える。
今日は、環境NGO熱帯林行動ネットワーク、レインフォレスト、そしてインドネシアでオランウータン保護活動をしているパウリヌス氏の話を聞いてきた。 貴重なお話で、参加してよかった~(簡単な流れと感想など)
1. 「インドネシアにおける森林火災・煙害問題について」/中司喬之(熱帯林行動ネットワーク:JATAN)」では、
ほんとに、森林の広範な面積を焼き尽くしている、というか、泥炭湿地での火災は、いぶりつくすというか、くすぶっている状態が長期間続くのだ。煙害は、インドネシア国内にとどまらずシンガポールにまで被害が及んでいる。
火災や煙霧による被害は2015年、(セミナー当日資料より)
【健康被害】呼吸系疾患50万人以上、24人死亡(7月以降)
【森林火災】260万ヘクタールが焼失(6月1日~10月31日)
【経済損失】221兆Rp(161億USD)→2004年アチェ州津波被害の二倍越
(Indonesia Economic Quarteriy The Worid Bsnk)
【気候変動】10月30日までに日本の年間排出量を超える約16億3600万トンの温室効果ガス排出
(Global Fire Emissions Database)
非常にショックだったのは、火災の様子をドローンで空撮したものが撮されたのだが、、ほんとうに消火活動といっても、広範で、手がつけられないような状況、、、現地の人が、ハチドリのひとしずくではないが、ヒシャクのようなもので水をかけている様子が映っていた、、、
セミナーは、なぜ火災が起きるのか?(環境要因)(人的被害)、誰が火災を起こしたのか?、違法なプランティーション開発と火災、政府による対応策と、話は進み、、、最後にまとめでは、
・火災が起きた土地の94%がスマトラ、カリマンタン、パプア→泥炭湿地やプランティーション開発が集中
・潜在的に火災の起きやすい場所(環境要因)で、開発のために水路を掘削することで燃えやすい状態にした(人的要因)ことが原因
・誰が火をつけたのか特定することは容易ではない。一方で、プランティーションを造成するための違法な火入れも確認されている。
・原料の調達、投融資を通じてこれらの違法な開発に関与している可能性も!
2. 「森林火災からオランウータンを守れ!パーム油開発に挑む」(逐次通訳付き) /パウリヌス氏(Centre for Orangutan Protection:COP)
パウリヌスさんはオランウータン保護センターの隊長をしているとのこと。パワポでいろんな映像を映しながら、森林火災の状況、そこで取り残されたオランウータンを救助すること、また、不法行為の調査や報告もする。オランウータンを救助したあとは保護し、リハビリ後、自然林に返すのだが、、保護センターは満杯で、かえす森林が減少、、、ほんとうにさまざまな問題を抱えているようだ。パウリヌスさんは、とてもよく通る声で、インドネシア語でのお話、その後通訳のかたが日本語で、、その都度最初に、テリマカシ(ありがとう)、テリマカシ(ありがとう)と、いわれて、とてもいい感じの若者であった。
強く印象に残ったのは、、、オランウータンのDNAは97%人間と同じ、行動や思考も共通していることが多いという。しかし、アブラヤシプランテーションの事業者からみるオランウータンは、アブラヤシの苗を食べる害獣であって、ハンターを使って駆除するのだという。そして、その頭蓋骨等がお土産屋さんで販売されること。森を追われ、住まいを奪われ、あげくのプランティーション、そして、ハンターや火災からも逃げられるのか、、、
また、実感として、単純に昔ながらの農園の「野焼き」「焼き畑」のイメージ拡大版のようにもみえるのだが、インドネシア政府も、慣習法(?)で野焼きによる時期や規模に制限をつけて、野焼きが広範にならないような規制は設けているという。それでも、その規制のあいだをすり抜けて、、火がつき、そこは規制の対象から外れて,開発可能になるようになってしまうという。ブルドーザーで伐採していくよりも火入れするというのだ。話を聞いていて、「火入れ」「火入れ」が、、??? だったのだが、、要は、誰かが火をつけるということなんだろう。開発に絡んでかの紛争で、殺人事件も起きている。しかし、いろんな法律や規制はあれど、違法な開発は歯止めがかからないというのが実情という。ほんとうに深刻な問題である、、、
【日時】 2016年2月5日(金)午後2時開演~5時まで
【場所】 貸し会議室 内海 2F /東京都千代田区三崎町3-6-15
【プログラム】
1. 「インドネシアにおける森林火災・煙害問題について」 /中司喬之(熱帯林行動ネットワーク:JATAN)」
2. 「森林火災からオランウータンを守れ!パーム油開発に挑む」(逐次通訳付き) /パウリヌス氏(Centre for Orangutan Protection:COP)
3. 「製紙会社APPの行状について~森林保護方針から3年」 /川上豊幸(レインフォレスト・アクション・ネットワーク)
【主催】 プランテーション・ウォッチ (熱帯林行動ネットワーク、レインフォレスト・アクション・ネットワーク、地球・人間環境フォーラム、国際環境NGO FoE Japan、サラワク・キャンペーン委員会、メコン・ウォッチ)、ウータン・森と生活を考える会
インドネシア森林火災の映像を見ると、
どこから手をつけていいかわからないような状況がよくわかる。
イ ンドネシア西カリマンタン(West Kalimantan)州のグヌンパルン国立公園(Gunung Palung National Park)周縁部の森林火災の様子。同国立公園はオランウータンにとって重要な生息地?であり、近くにはパーム油の開発区域もある。(c)AFP
3. 「製紙会社APPの行状について~森林保護方針から3年」 /川上豊幸(レインフォレスト・アクション・ネットワーク) では、
製紙会社APP社は変わったのか?、、今日の話を聞く限りでは、残念ながら、No!と言うしかない。
WWFジャパンのホームページに「APP社 、APRIL社関連問題」としてとても詳しくでているので、ここではあえて取り上げないが、、
2013年には、グリーンピース・ジャパンから「2月5日、世界最大規模の製紙会社で、熱帯雨林破壊の代名詞とされてきたAPP(アジア・パルプ・アンド・ペーパー)社が、熱帯林の伐採をやめると宣言しました。」というニュースがMLで流れてきたものだ。驚くほどのビッグニュースであったというか、しかし、それ自体が眉唾物ではあったのだが、、、いろんなNGOがかかわりながらの、「APPの森林保護方針」であったが、、結果的に、今日の報告では、、、まだまだ、、、まだまだ、、
レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表部(RAN) 当日ペーパーで配布されたが、まだネット上で公開されていない
●緊急リリース アジア・パルプ&ペーパー(APP)が問題のない企業となるまでには長い道のり (2016年2月4日)
成果の欠落、環境破壊、紛争、不透明な企業ガバナンス -精査と独立した進捗検証が必要-
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
●製紙メーカーAPP社に関するアドバイザリー(勧告) 2015/12/09
プレスリリース発表元企業:Asia Pulp & Paper Group
自然林伐採の即時かつ全面的中止を誓約 すべての原料供給会社が自然林の伐採を中止
泥炭林地を含む、すべての森林を保護
高炭素蓄積評価の実施
先住民族や地域コミュニティの権利のため、国際的な最善慣行を採用
NGOによる独立した監視
※財形新聞:「(インドネシア・ジャカルタ)- アジア・パルプ・アンド・ペーパー・グループ(APP)は、インドネシア国内のサプライチェーン全体を対象として自然林の即時伐採停止を発表しました。 」より
森林保護方針をだして生まれ変わったかのように、、
日本でのAPPは、2013年からは、ビッグサイトで開催される「エコプロダクツ展」にも出展している
びっくりしたのは、 あつかましいというか、これってブラックユーモアーかとおもうような、、
エコプロダクツ2014では、「みんなの紙が、オランウータンを救う」と大々的にAPP関連商品を宣伝をしていたのだ。
さすがに、「APPの紙が、オランウータンを救う」とは書けなかったのか、「みんなの紙が、、、」である、、、
(コピー用紙などの売り上げの一部を、オランウータンを救うプロジェクトに寄付しているようで、)
Greenpeaceに、「世界最大規模の製紙会社で、熱帯雨林破壊の代名詞とされてきたAPP(アジア・パルプ・アンド・ペーパー)社」とまで言われるAPPの商品は、日本でも数多く流通している。輸入のコピー用紙に至っては、その8割(?)がAPP関連とか、
日本では、環境関連での不買運動などはまったく成功しないのだが、、、というか、ほとんどの人が問題と認識しないので、、
いまだに、、、価格の安いものを選ぶ消費者、企業が実に多いということなのか、、かなり売れているのだろう、
写真を見る限りでは、キョクトウの学習帳しか商品名はわからないが、、、
■APRIL社 ペーパーワン、コピー&レーザー
問題企業APP(エーピーピー)社製、APP社製と考えられるコピー用紙■APP社 エクセルプロ、ワイドプロ、アクアホワイトなど
■アスクル スーパーエコノミー、スーパーホワイト、エコノミーカラーペーパー
■コクヨS&T コピー用紙[PPC-WAA3C他]、PCCカラー用紙[KPC-CA4-1~16]
■カウネット マルチ高白色タイプ、スタンダードタイプ、スタンダード高白色タイプ、スタンダードカラーペーパー
■キョクトウ・アソシエイツ プレミアム・ホワイト、プレミアム・ナチュラル、インダ・ホワイト
■B5 ナチュラルホワイト、カラーペーパー
■ロックモント スーパーエコー、パールエコー、パールエコー高白色、白箱良品
■ワンステップ スーパーエコー、キラットカラーコピー
■プラス ジョインテックスカンパニー インドネシア産Smart Valueコピー用紙
■フォーレスト Forestway コピーペーパー インドネシア製
(セミナーの質疑の中で、かつてはリコー商品もAPPの時期があったようだが、今はAPPを使っていないとのこと。)
WWF「全ての企業そして消費者に問われる森林破壊の責任」では、富士ゼロックスもAPP社製品の取り扱いを中止したとなっている。
関連(本ブログ)
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