指定廃棄物が搬入される見通しになった福島県富岡町の最終処分場。奥は停止中の東京電力福島第2原発
河北新報「 <指定廃>富岡の処分場へ搬入へ」より
■ <指定廃>富岡の処分場へ搬入へ
河北新報 2017年5月18日
東京電力福島第1原発事故で発生した福島県内の指定廃棄物を富岡町の最終処分場に埋め立てる計画で、伊藤忠彦環境副大臣は17日、搬入路がある楢葉町で松本幸英町長と会談し、地元行政区との安全協定が未締結でも廃棄物を搬入する方針を伝えた。開始時期は未定。全国初の指定廃棄物の最終処分が進む見通しになった。
環境省は、楢葉町繁岡、上繁岡の両行政区と安全協定を結んだ上で搬入を始める予定だった。しかし、繁岡に反対論が根強く、早期締結は困難と判断した。上繁岡とは締結を目指す。
伊藤副大臣は「双葉郡、福島の復興に不可欠の事業。県内の廃棄物の処理状況を踏まえると早期に開始するのが責務だ」と説明。住民に理解を求めながら、搬入道路工事などの準備を急ぐ考えを示した。
松本町長は「行政区との協定は条件ではないが、締結した上で進めるのが望ましい」と指摘した上で「搬入時期は国の判断。安全に事業を進めてほしい」と理解を示した。会談には鈴木正晃副知事が同席した。
国は民間の最終処分場だったエコテッククリーンセンターを昨年国有化。放射性物質濃度が1キログラム当たり8000ベクレル超10万ベクレル以下の汚泥や焼却灰を処理する。県内で保管中の指定廃棄物は3月末で16万1341トン。
富岡、楢葉両町と県は2015年12月に計画受け入れを決定、16年6月に環境省と安全協定を締結。富岡町の地元2行政区も16年、協定を結んだ。
■ 環境省、今秋にも搬入 富岡の指定廃棄物処分場
福島民報 2017年5月18日
東京電力福島第一原発事故で発生した県内の指定廃棄物を富岡町の管理型処分場で埋め立てる国の計画で、今年秋にも環境省による廃棄物搬入が始まる見通しとなった。同省が17日、搬入路がある楢葉町に対し、近く搬入路の整備などに着手する方針を示した。同省と安全協定を結ぶ県、同町は埋め立て開始に理解を示した上で、周辺住民の安全確保や丁寧な情報提供などを求めた。
■安全確保を要求 県、楢葉町
伊藤忠彦環境副大臣が楢葉町役場で松本幸英町長に対し「双葉郡、福島県の復興に必要不可欠な事業。できるだけ早期に(埋め立て処分を)開始することが国の責務」と強調。地元行政区と安全協定の締結に至らない場合でも「楢葉町、富岡町、福島県と調整の上で廃棄物を搬入したい」と述べた。
松本町長は「行政区との協定締結後に事業を進めるのが条件ではないものの、望ましい形だと考えている」と述べ、引き続き地元への丁寧な説明を求めた。搬入時期については「(事業主体である)国の判断だ」とした。
伊藤副大臣は搬入時期を明らかにしなかったが、関係者によると県や楢葉、富岡両町などに対し、早ければ秋ごろに搬入を開始する意向を伝えている。県内の減容化施設や仮置き場などにたまり続ける指定廃棄物を見据え、焼却処理やセメント固型化などによる埋め立てを進め、環境回復を急ぐ考えだ。
同席した鈴木正晃副知事は「地元へ丁寧に説明しながら安全・安心の確保を最優先に事業の円滑な推進に努めてほしい」と求めた。
同省によると、搬入路の整備は6号国道に接続する既存の町道を拡幅し、大型車両の往来に備えて舗装を厚くする。工期は半年程度の見込みで、早期に着工できれば秋か冬には廃棄物搬入が可能になるという。
管理型処分場の埋め立て容量は約65万立方メートル。内訳は(1)双葉郡8町村の生活ごみ約2万7千立方メートル(2)避難指示区域が設定された市町村で発生した災害がれき、帰宅時の片付けごみなど約44万5千立方メートル(3)県内で発生した焼却灰や下水汚泥など1キロ当たり8000ベクレル超10万ベクレル以下の指定廃棄物約18万2千立方メートルとなる。
埋め立てには(1)は約10年間、(2)と(3)は約6年間かかる見込みで、今年秋に搬入が始まれば39年ごろには埋め立て処分が完了する。指定廃棄物とは別に県内で発生した除染廃棄物は最大2200万立方メートルに上ると推計しており、同省が全て中間貯蔵施設(大熊町・双葉町)に搬入する。
県と楢葉、富岡両町は27年12月、指定廃棄物を管理型処分場で処理する国の計画を了承。同省は28年4月に処分場を国有化した。当初、28年度内に搬入を開始する計画だった。搬入路がある楢葉町の上繁岡、繁岡両行政区との調整は難航し、現時点で安全協定の締結に至っていない。