東京新聞「新高速炉 負担増大も もんじゅ代替 18年に工程表」より
■ 高速炉 もんじゅ代替開発具体化 政府骨子案、不確実性に不安も
毎日新聞-2016年12月1日
政府は30日、廃炉を前提に見直す高速増殖原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)に代わる高速炉の方向性を議論する「高速炉開発会議」の第3回会合を開き、2017年初頭から開発方針の工程表策定を始めるとした骨子案を示した。作業部会を新設し、18年をめど ...
■新高速炉 負担増大も もんじゅ代替 18年に工程表
東京新聞-2016年12月1日
政府は三十日、廃炉が濃厚な高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)に代わる新たな高速炉を国内で建設するため、今後十年程度で必要になる作業をまとめた工程表を二〇一八年中に示す方針を固めた。一兆円の国費を投じながら、ほとんど稼働していないもんじゅの反省もないまま、さらに天井の見えない負担が国民にのしかかる恐れが出てきた。 (吉田通夫)
官民合同の三十日の「高速炉開発会議」で、今後の開発方針の骨子をまとめた。十二月中に関係閣僚会議を開き、もんじゅの廃炉時期と併せて正式に決める。
高速炉の実用化には(1)実験炉(2)原型炉(3)実証炉-の段階を踏み、実験データを集めて研究を進めねばならない。日本では(2)の原型炉のもんじゅの段階でつまずいたが、政府は仏政府が計画する実証炉「ASTRID(アストリッド)」に資金を出して共同研究したり、(1)の実験炉「常陽」(茨城県、停止中)を活用すれば、(3)の実証炉での研究に進むために必要なデータを集められると判断。国内に新しい実証炉を建設する方向で調整している。
しかし必要な費用は検証できない状態だ。アストリッドは設計段階で、建設費は固まらず日本の負担額は分からない。常陽も東日本大震災後、耐震など新たな規制基準に合わせる工事をしている途中で、費用は不明。さらに新たな高速炉を建設する場合、構造が複雑なため、建設費が通常の原発より数倍は高いとされる。規模によっては一兆円を超えるとの見方もある。
会議後、経済産業省原子力政策課の浦上健一朗課長は記者団に「現段階で費用は示せない」と話すにとどめた。もんじゅを所管する文部科学省も、過去の会議では、もんじゅを再稼働する場合と廃炉にする場合の費用試算を示しただけ。それでも政府は、原発で使い終わった核燃料を再利用する「核燃料サイクル」には高速炉が必要だとする従来の考え方を強調し、開発続行の方針を打ち出した。
原子力政策に詳しい原子力資料情報室の伴英幸(ばんひでゆき)共同代表は「政策の流れを変えられないから費用や反省点を検証せず続けるというのでは、新しい高速炉を造ってもうまくいかないだろう」と話した。
◆プルトニウムを増やさず 高速増殖炉と高速炉の違い「もんじゅ」は高速増殖炉の原型炉とされる。「増殖」は、消費した以上の燃料を作り出せるという意味。炉心の周囲に置いた燃えないウランを、燃えるプルトニウムに変えることができるからだ。
しかしプルトニウムが余る時代となり、増殖の意義が薄れ、かえって核兵器の材料になるやっかいものを増やしてしまう。政府は、これからは増殖させない高速炉を開発するとしている。
共同研究が想定されるフランスのASTRID(アストリッド)は、高速実証炉。周囲に燃えないウランを置かないので、プルトニウムの増殖はない。また長期間にわたって放射線を出し続ける核廃棄物を燃やし、処分期間の短縮につながる可能性もある。ただし、もんじゅ同様、核分裂で生じた熱を伝えるために、危険なナトリウムを用いる。
なお「高速」とは、核分裂連鎖反応を起こす中性子の種類のこと。普通の原発では、燃料にぶつける中性子を水で減速させている。もんじゅなどは、中性子の減速をしないため、高速の名がある。
■東海再処理施設 廃止へ10年で2173億円 原子力機構 固化短縮策も報告
茨城新聞-2016年12月1日
日本原子力研究開発機構(原子力機構)は30日、70年かかるとする東海再処理施設(東海村村松)の廃止措置について、本年度から10年間で2173億円の費用が必要などとする計画を原子力規制委員会に報告した。これまで、約20年かかるとしていた高レベル放射性廃液のガラス固化処理は「12・5年」に短縮する。ただ、再処理施設の廃止措置は、世界的にも例が少ないことなどから、70年間の細かな全体計画は決まっておらず、想定通り固化処理期間を短縮できるかも不透明。今後、規制委は報告書を慎重に検討する。
規制委は固化処理が4月から機器のトラブルなどで中断している現状を問題視し、原子力機構に対して8月、同施設の廃止措置計画や固化処理短縮策などを11月末までに報告するよう文書で指示していた。原子力機構は30日、同施設の安全対策を確認する規制委の監視チーム会合で、これまでに議論した方針に沿った内容を報告した。
報告書の中で原子力機構は、同施設の廃止費用について、10年間にかかる費用を初めて明らかにし、除染や高放射性廃液貯蔵施設などの老朽化した施設の対策、新規制基準への対応などを盛り込んだと説明した。
原子力機構は、70年のうち前半に資金を集中させて、固化処理に関わる安全対策などを進める必要があるとし、一方で70年全体の計画については「精査中」とするにとどめた。
廃止措置は、使用済み核燃料をせん断し、ウラン、プルトニウムの分離などが行われた主要施設の分離精製工場やプルトニウム転換技術開発施設など4施設から着手し、放射性物質で汚染された管理区域のある約30施設についても段階的に廃止する。
12・5年に短縮するとしている廃液の固化処理については、現状のガラス溶融炉を改良して作業体制の拡充を目指すとする。固化処理施設の稼働率を上げ、固化体の製造本数を現在の年間50本から80本まで増やすことによって、短縮を実現させる方針。廃液の全量処理にかかる費用は360億円としている。
原子力機構の児玉敏雄理事長は「安全を最優先として国民への説明責任を果たしながら計画を進めていく」などとするコメントを出した。
原子力機構は、詳しい工程を示した廃止措置計画を2017年度に作成し、規制委に認可申請するとしている。 (高岡健作、戸島大樹)
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