■ 前処理施設が完成 農林業系廃棄物 江刺 課題解決に一歩前進
岩手日日新聞 2015年6月4日
東京電力福島第1原発事故に伴う放射能問題で、奥州市が同市江刺区内に整備を進めていた農林業系廃棄物(牧草)の前処理施設が完成した。試験焼却 を経て焼却施設周辺住民の合意が得られれば、前処理施設に牧草を搬入し、裁断作業を開始する予定。国との協議に時間を要したために整備は大幅に遅れたが、 待望の施設完成により課題解決に向けて一歩前進した格好で、市は「住民の安全を最優先に取り組みを進めていきたい」としている。
前処理施設について奥州市、金ケ崎町、奥州金ケ崎行政事務組合の3者は2013年、焼 却処理施設の胆江地区衛生センターがある同市水沢区佐倉河の同組合事務所北側空きスペースに共同整備する案を提示したが、施設周辺住民の合意が得られず、 両市町に分散設置する方針に切り替えた。
これを受けて市は、岩手ふるさと農協と岩手江刺農協の両管内各1カ所の計2カ所に整備する方向で候補地を選定。このうち、同市江刺区玉里字川子野沢地内の共同利用地(民有地)について住民合意が得られた。
焼却施設敷地内への整備を求めていた環境省との協議に時間を要したため、整備工事は当初計画したよりも大幅に遅れたが、今年4月から約2カ月で完了した。
完成した前処理施設は鉄骨造りのテント型で、面積約400平方メートル。内部には牧草の裁断機と集塵(しゅうじん)機を配置した。周辺への臭気漏れがないように設計されている。
市生活環境課では、1日2回、作業開始前と作業中に周辺5カ所で空間放射線量を測定し、測定値を出入り口付近に表示するほか、河川の放射性物質濃度測定の結果も公表する。
菅原達郎課長は「市民の安全を考え、丁寧な説明、情報提供に努める」と話し、もう1カ所の候補地についても周辺住民の理解が得られるよう努めていく考えだ。