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桑名のPCB流出問題 県が民事調停へ

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【行政代執行の対策工事が進む現場=桑名市五反田源十郎で】
伊勢新聞「 <まる見えリポート>桑名のPCB流出問題 県が民事調停へ」より


■ <まる見えリポート>桑名のPCB流出問題 県が民事調停へ

伊勢新聞 2016年10月10日(月)

 桑名市内の河川敷で有害物質のPCB(ポリ塩化ビフェニル)を含んだ油が流出した問題で、県が油を埋め立てたとされる相手方との民事調停に踏み切ろうとしている。調停では相手方に油の回収作業の実施を求めたい考えだ。一方、県はPCBを廃棄した人物について特定できておらず、行政代執行で投じる二十八億円の対策工事費を調停で請求できるわけではない。有識者からは、廃棄した人物を特定する県の調査が「不十分だった」との指摘が上がっている。
(県政・海住真之)


 油が流出した現場は、東名阪自動車道の桑名インターチェンジから西に約三・五キロ。東員町との境界付近で、員弁川と藤川の合流地点に位置している。PCBや油の流出を防ぐための鋼矢板を張り巡らし、対策工事に使用する数台の重機がある。

 油の汚染は平成十九年に発覚。採取した油から環境基準の約一万九千倍に相当するPCBを検出した。付近に投棄された電気機器のコンデンサ素子に含まれていたPCBが油に溶け込んだとみられる。PCBは発がん性などの恐れから現在は製造が禁止されている。

 事態を重く捉えた県は、約五十一億円に上る対策工事の実施計画を策定。環境相の同意を受け、国が45%に当たる約二十三億円、県が55%の約二十八億円をそれぞれ負担する。平成三十四年度の完成に向け工事を進めている。

 県は先月、問題に関連してコスモ石油を相手方に民事調停を申し立てる議案を県議会に提出した。同社の前身の会社は現場付近に処分場を設け、石油精製の過程で生じた油を含んだ汚泥を焼却し、埋め立てていた。県は調停で同社に油の回収と処理を求める。

 県がコスモ石油と合意する手段として訴訟ではなく調停を選んだ理由は、証拠のあいまいさのため。同社が廃棄したと確認されたのは、あくまで油の焼却灰。流出したのは焼却処理をされずに廃棄された油で、同社の廃棄物が流出したというのは県の「推認」だ。

    ■  ■
 PCBを誰が廃棄したかが最も重要な点だが、県は「推認」どころか糸口さえつかめていない。県の担当者は「特定に向けてあらゆる調査を尽くしてきた。PCBを廃棄したのが誰かが分からないことに、じくじたる思いだ」と語る。

 一方、県の調査に問題があったとの意見もある。有識者らでつくる調査検討委員会が平成二十四年に出した答申は、県の対応について「過去に不法投棄の情報提供を受けながら、関係者への聞き取りや詳細な調査を実施していなかった」としている。

 油の流出が発覚してからPCBが検出されるまでの約三年間は、聞き取りの対象をコスモ石油や土地所有者だけにして、幅広い調査を実施していなかった点にも言及。当時の対応は「不十分だった」と指摘した。

 廃棄物処理法違反事件として警察当局が専門的な捜査をすれば、特定に向けた糸口をつかめる可能性もある。ただ、県警からは「今のところ事件としては扱っていない。そもそも不法投棄は刑事上で五年の時効があり、とうに過ぎている」との回答だった。

 環境保全の工事は優先させるべきだが、不法投棄をした人物に代わって県が支払う二十八億円は全て税金。廃棄した者が特定されなければ、「捨て得」だったと捉えられかねない。県民も「じくじたる思い」として受け入れざるを得ないのだろうか。


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