「水銀に関する水俣条約」に基づく水銀の排出規制は、廃棄物の焼却施設にも係ってくる~
今後、廃棄物焼却炉にも、水銀の排出基準が設けられ、施設の改変や測定が義務づけられるのか、、、
ただいま環境省で、パブリックコメント実施中
「水銀大気排出抑制対策について(第一次報告書案)」に関する意見募集(パブリックコメント)」(5月27日締め切り)
環境省「水銀大気排出抑制対策について(第一次報告書案)」より抜粋
ビジネスチャンス到来か、さっそく、2016年1月にJFEエンジニアリングは「廃棄物焼却排ガス中の水銀除去新システム~「水銀に関する水俣条約」への対応~」、、2016年2月に日立造船は「ごみ焼却プラントにおける排ガス中の水銀除去システムを開発~水銀除去のトータルソリューションを提供~」として、、廃棄物焼却施設の水銀除去システムのプレスリリースをおこなっている。
この報道を目にしたときは、、、「新システムを開発」などとなっているので、なにか画期的な装置でもできたのかと思ったが、、、よく考えてみると、23区の清掃工場、長年の試行錯誤の末に実施している水銀除去システムと同様のものとおもえる~
なにしろ、23区では、1986年の大田清掃工場建設事業の環境アセスで、排ガス中の水銀濃度を0.05mg/m3Nを自己規制値(管理値)と設定したようで、、その後、全清掃工場の自己規制値となる。そして、先月末に読売新聞で「ゴミ焼却施設、水銀で緊急停止…6年で19回」などと報道されるほどに、その間に、水銀廃棄物による自己規制値超過で、度々焼却炉の停止を余儀なくされているのだ。
23区清掃一組で、不適正ごみの搬入禁止として「水銀混入ごみにより停止した焼却炉の復旧状況等、焼却炉停止等の経過」をホームページなどで具体的に公表を始めたのは、2010年6月の足立清掃工場の水銀廃棄物による炉停止から。なにしろ復旧費用に約2億8千万円も要した大惨事であった。そして、直近では、2016年3月の中央清掃工場の被害額は1,200万円となるなど、、どんなに画期的な水銀除去システムであれ、その処理能力以上の水銀ごみをバンカに入れられたらどうしようもないということなんだろう。23区の清掃工場は、排ガス中の水銀濃度に自己規制値を設け、排ガス中の水銀除去、水銀濃度の連続測定を実施しているからこその被害、惨事の発覚というか、、、23区だけがごみ出しマナーが極端に悪いという問題でもないとおもいたいが、、
全国各地の一般廃棄物の焼却施設1,162 施設 施設(平成26年度時点) 、そして産業廃棄物の焼却炉、、、そのうちで排ガス中の水銀濃度の自己規制値を設けている施設がどの程度あるか、、、おそらく極わずかであろうが、、今後、それらの焼却施設に規制がかかり、まじめに水銀の排出規制を遵守しようとすると、、、あちらでもこちらでも焼却炉の水銀大パニックが起きるかもしれない。
23区清掃工場の「液体キレート緊急自動注入装置」が気になって、、、清掃技報などをいまいち読み直してみた。
時系列で職員技術発表会資料や清掃技報のタイトルを紹介(詳細は清掃技報を参照のこと)
2008年
清掃技報(第8号平成20年)
●液体キレート供給ラインの強化(足立清掃工場) ←手動でろ過式集じん器前へ吹き込む活性炭と、排ガス洗浄塔へ注入する液体キレート増量、、から、従来の液体キレート注入ラインに、原液の入ったサービスタンクと注入ポンプとを直結し、原液を直接注入するラインを増設。ろ過式集じん器出口で水銀濃度の上昇がみられたときにはパルプを手動で開き、液体キレートの原液を直接注入するラインを増設。
2010年6月 足立清掃工場、水銀廃棄物による炉停止
2011年2月
職員技術発表会(第11回)
●水銀混入ごみによる清掃工場の停止・復旧及び再発防止対策について(施設管理部)←洗煙設備において緊急時用液体キレート注入ラインの整備、搬入物検査の強化、23区との連携など
2012年2月
職員技術発表会(第12回)
●葛飾清掃工場における高濃度水銀対策の取組について(葛飾清掃工場)←高濃度水銀除去対策(緊急灯入用タンク設置、液体キレートラインの設置、緊急灯入用ラインの改造、通常時使用ポンプの増強、運転マニュアルの修正) この発表を聞いたときは、はやく全工場に整備すべきと思ったが~
2012年
清掃技報(第12号平成24年)
●葛飾清掃工場における高濃度水銀対策の取組について(葛飾清掃工場)←職員技術発表会の内容を、より専門的に図入りで報告している。
●水銀混入ごみによる操業停止と再発防止対策(施設管理部)←排ガス中の水銀濃度が上昇した場合の基本的な対応方針を全工場に周知徹底など。今後、全工場において水銀濃度上昇時の洗煙設備への液体キレート注入ラインの設置とろ過式集じん器出口排ガス水銀濃度計の設置を実施する。液体キレートの原液を自動的注入するラインの設置、対象工場は光が丘、大田、目黒、港、豊島、中央、多摩川、品川清掃工場。光が丘は平成22年度に実施した。その他の清掃工場は平成23年度末までに実施する予定。など、、
●液体キレート緊急投入ラインの設置(光が丘清掃工場)←更なる対策として、新たに原液キレートを冷却吸収塔内に注入する装置を設置。詳細は清掃技報に、
2014年
清掃技報(第14号平成26年)
●液体キレート緊急自動注入装置による有効性の検証(有明清掃工場) ←平成23年度に液体キレートを排ガス処理設備に緊急的に追加注入する装置を設置したが、迅速な液体キレートの初期注入と適切な濃度管理が~重要であることから、当該装置の自動化を図った。専門的な説明、フロー図、グラフなどあり。今後、装置の導入をおこなう場合の留意点などもでている。詳細は清掃技報に~ 驚いたのは、有明工場は大半が事業系の持込ごみであるにもかかわらず、これまでに水銀による焼却炉の停止はない工場という認識であったが、平成24年度に2回水銀濃度の急上昇を被ったとのこと、しかし、装置の稼働で煙突出口での自己規制値の超過に至ることなく、制御かつ抑制することができたとのこと。
2015年
清掃技報(第15号平成27年)
●洗煙設備におけるキレート剤の挙動と注入方法の検討(葛飾清掃工場、清掃技術訓練センター、施設管理部、目黒清掃工場) ←キレート剤と塩化水素との反応の可能性等、専門的なことがいろいろでている。詳細は清掃技報に、、、
と、、、いろいろ清掃技報などからピックアップしたのだが、、、
23区の清掃工場、好きで水銀による焼却炉停止をしているわけではなく、排ガスの水銀除去のためにさまざまな努力をしているのだということをいまさらながらに再認識した次第。清掃技報の図やグラフなど詳細をコピペするのは簡単だが、、専門的なことはなにもわからないので、そこまでコピペするのはやめた。23区清掃一組も「全国都市清掃研究・事例発表会」などでもこれまでの取組を報告しているようだが、、、今後、廃棄物焼却炉の水銀排出規制が実施されれば、全国の自治体にこれまで培ってきた知見をしっかりと情報発信していかなければ、、、もちろん、プラントメーカーなどにとってはビジネスチャンスなので余計な心配はいらないとは思うが、、「清掃技報」は、区政会館4階の「特別区自治情報交流センター 」でを閲覧可能。(貸し出しは不可だがコピーは可)
実は、この「液体キレート緊急自動注入装置」を見直すきっかけとなったのは、23区清掃一組の随意契約をみたから、、
参考、、、(契約事業者、契約金額)
中央清掃工場は、装置設置機械工事を終えた後の平成28年3月11日に水銀による炉停止、電気工事が後からで間に合わなかったのだろうか?よくわからない、,2段構えの契約
2016年度(平成28年度)
●江戸川清掃工場「液体キレート緊急注入設備自動化工事」JFEエンジニアリング(株)8,640,000円
2015年度(平成27年度)
●中央清掃工場「中央 緊急用液体キレート注入装置設置電気工事」日立造船(株)9,180,000円(平成28年3月1日~平成28年3月22日)
●中央清掃工場「緊急用液体キレート注入装置設置機械工事 」日立造船株式会社10,368,000円(平成27年11月12日~平成28年1月8日)
●港清掃工場「液体キレート緊急注入装置改造工事」三菱重工環境・化学エンジニアリング(株)11,448,000円
2014年度(平成26年度)
●豊島清掃工場「水銀出力表示ソフト改修工事」(株)東芝 ソリューション2,808,000円 ??
●豊島清掃工場「水銀出力増設工事」東亜ディーケーケー(株)3,229,200円 ??
2011年度(平成23年度)
●目黒清掃工場「2号炉液体キレート注入設備設置工事」富士電機(株) 4,683,000円
●目黒清掃工場「1号炉液体キレート注入設備設置工事」富士電機(株) 4,683,000円
●有明清掃工場「液体キレート注入設備他改修工事」三菱重工環境・化学エンジニアリング(株) 11,550,000円
2010年度(平成22年度)
●葛飾清掃工場「高濃度水銀対策工事」(株)タクマ7,455,000円
日立造船株式会社 2016年02月16日 ごみ焼却プラントにおける排ガス中の水銀除去システムを開発
~水銀除去のトータルソリューションを提供~ Hitz日立造船株式会社は、このたび、ごみ焼却・発電プラントの排ガスに含まれる水銀を効率的に除去できるシステムを開発しました。
JFEエンジニアリング株式会社 2016年1月15日
廃棄物焼却排ガス中の水銀除去新システム
~「水銀に関する水俣条約」への対応~
JFEエンジニアリング株式会社(本社:東京都千代田区、社長:狩野久宣)はこのたび、廃棄物焼却施設の排ガスに含まれる水銀を除去する新システムを開発しました。
排ガス中の水銀除去システム概要