■アスベスト:北九州市職員 清掃で石綿 公務災害認定
毎日新聞-2015年6月12日
北九州市立の清掃工場破砕施設で勤務し、びまん性胸膜肥厚(きょうまくひこう)になったのは、施設の建材や作業で生じた破砕物から出たアスベスト(石綿) を吸い込んだのが原因として、2011年に死去した男性市職員(当時72歳)の家族が訴えていた請求について、地方公務員災害補償基金北九州市支部審査会 が公務災害認定したことが分かった。清掃職員の認定は珍しく、全国の同様施設での被害認定に道を開く可能性もある。
関係者によると、職員は1973~92年、古い破砕施設で設備運転や清掃などを担当。退職後の07年ごろから肩や胸の痛みを訴えて入退院を繰り返し、11年4月に呼吸困難となり死亡した。
当時は危険性が知られていなかった冷蔵庫などアスベストを含む粗大ごみの破砕を日常的にやっていた。また破砕施設は天井や壁がアスベストを含む防音材で覆われ、振動や風ではがれ落ちることもあったという。
家族は11年3月、基金支部に認定申請したが、支部は13年3月、「びまん性胸膜肥厚は発症していない」などと却下。家族が13年8月、審査会に審査請求し、審査会は家族側の訴えを認めて逆転認定した。
地方公務員災害補償基金本部(東京都)が把握する石綿被害の公務災害請求件数は14年度までに146件で、うち災害認定は42件にとどまる。阪神 大震災のがれきを処理した兵庫県明石市の男性職員(13年10月死亡)もアスベストで中皮腫を発症したとして公務災害を申請したが認められず、妻が14年 5月、審査会に審査請求している。
石綿対策全国連絡会議(東京都)の古谷杉郎(すぎお)事務局長は「因果関係が認定されるケースは消防服に石綿が使用されていた消防士や理科教員らが多く、清掃職員の認定は初耳。同様の被害を受けた職員救済に道を開く」と評価している。【浅野翔太郎、祝部幹雄】